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魔王 不思議な能力を持つ兄弟の穏やかな小説

2006/11/24 22:50
魔王
 感想☆☆☆☆ 伊坂幸太郎 講談社
 久しぶりに伊坂さんの小説。
 やはり、不思議な設定と不思議な展開。
 でも、強引さやトリッキーな感じはなく、
 むしろ穏やかな感じすらするのが
 この小説家の楽しみですね。

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 ★兄弟の話
 魔王ネタバレしない程度に簡単にあらすじを紹介すると、
 不思議な能力を持った安藤兄弟を
 主人公にした短編「魔王」と「呼吸」の2冊です。
 憲法九条の改正を巡って、
 ファシズムを予感させる政治家犬養に対して、
 相手の言葉を繰ることができる兄が挑む「魔王」。
 一方、兄の死後、東北の山のなかで、
 鳥の観察を仕事にした弟、潤也は
 予知能力を身につけていたという展開の「呼吸」。
 「消灯ですよ」というフレーズなど
 少しずつ、登場人物や設定が重なりながら、
 会話文の楽しさや、奇妙な設定の良さを
 かもし出す短編に仕上がっています。

 ★宮沢賢治とムッソリーニ
 ファシズムへと傾く日本を背景に、
 よく出てくるのがムッソリーニと宮沢賢治。
 特に、宮沢賢治の詩が効果的に
 使われています。
 宮沢賢治はもともと全体主義的な思想を
 含んでいることはいろいろ指摘されています。
 全体に奉仕する個人の死というテーマの
 「グスコーブドリの伝記」は
 神風特攻隊を想起させるという指摘は有名ですが…。
 でも、この関連性を踏まえていても、
 賢治の使い方はいいですね。
 「諸君はこの颯爽たる
  諸君の未来圏から吹いて来る
  透明な清潔な風を感じないのか
」。
 「生徒諸君に寄せる」という作品ですが、
 なかなか効果的です。
 (偽作という話もある作品ですが)

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オーデュボンの祈り 伊坂文学は原点から不思議な推理世界

2006/06/05 18:03
オーデュボンの祈り
 感想☆☆☆ 伊坂 幸太郎  新潮社
 最近、読み続けている伊坂さんを
 原点から読んでみよう、ということでの
 このデビュー作に。
 「オーデュボン」とはアメリカの鳥類学者でして、
 全滅してしまったリョコウバトの記録を遺した人。
 作中にもきちんと説明があります。

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 ★簡単なあらすじは
 オーデュボンの祈り主人公の伊藤は、外と交流がない荻島に紛れ込み、
 未来を知っていて、喋る案山子と出会う。
 しかし、この案山子が殺されて……
 というミステリー調の展開です。
 ちょっとファンタジーがかったところは、
 「終末のフール」などその後の作品につながるところ。
 淡白だけど、ごつごつした文章ですが、
 本の構成を工夫しているので、
 意外にすいすいと読めてしまいました。
 ほかの本でもそうでしたが、なぜか読めてしまう、
 というのは大きなメリットだなあ、と思います。
  
 ★ラストは悲哀が残る…
 また、井坂さんの特徴である個性的な登場人物
 という点では、この「オーデュボンの祈り」も
 そうとう個性的な人たちばかりでして、
 現実社会からは完全にはじき出されてしまうでしょう。
 特に、桜、という少年からは、すごいインパクトを受けました。
 そして、ラスト近くの案山子事件の追究は
 メタ文学論も交えていますが、
 悲哀が強く感じられるいい山場でした。

 追記(2006/7/7)
 直木賞候補にまたなりましたね。
 (番外・直木賞で紹介しています。)
 「砂漠」で受賞できるのか、
 とっても気になります。

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チルドレン ほのぼのとした事件と、動き続ける世界の悲しみ

2006/05/19 18:22
チルドレン
 感想☆☆☆☆ 伊坂幸太郎 講談社
 映画「陽気なギャングが地球を回す」の原作者、伊坂さん。
 最近、話題になっているので、
 ちょこちょこ読んでいこうと思います。
 この本「チルドレン」は仙台市を舞台にした、
 五本の短編小説をまとめています。
 脇役の陣内という人がずっと出続けて、
 5つがつながっているちょっと凝った構成です。

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 ★奇妙な状況の話が・・
 チルドレンネタバレすると、楽しさがだいぶ減ってしまいそうなので、
 入り口ぐらいのだけにすると、
 銀行強盗に巻き込まれたり、
 泥棒が出てきたり、などと
 犯罪と絡んで、ちょっとした謎解きがある小説でした。
 赤川次郎さんの小説がもうちょっと小説らしくなった、
 という感じでしょうか。
 陣内くんという登場人物の際立つ個性がまた興味をひく、
 というのも赤川さんの書き方によく似ています。

 ★そして、社会は変わらない
 ただ、赤川さんとの決定的な違いは、
 どこか非常にさめた社会であるところ。
 登場人物の孤独感、そして奇妙な悲しみが魅力です。
 カポーティの小説の中の言葉、として登場人物が話す
 「あらゆるものごとのなかで一番悲しいのは、
 個人のことなどおかまいなしに世界が動いていることだ。
 もし誰かが恋人と別れたら、世界は彼のために動くのをやめるべきだ

 とあります。
 この本のことのようです。

 と、ここでほかのブログ見ていたら、
 今度坂口憲二さん主演で
 WOWOWでドラマ化されていたのですね。
 WOWOW見れないんですけど、ちょっとワクワクします。
 

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終末のフール  地球滅亡を迎える普通の人々

2006/04/22 20:53
『終末のフール』
 感想☆☆☆☆☆  伊坂幸太郎 集英社
 直木賞とか、映画の原作とかで
 この頃、よく名前を聞く小説家、伊坂さんを
 この本「終末のフール」で初めて読みましたが、
 ちょっと不思議なSFのような設定の中で
 普通の人々の暮らしが描かれています。
 異常な混乱状況の中で
 「どう生きるか」ということが突き詰められています。

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 ★終末を約束された世界
 終末のフール舞台となるのは、
 「8年後に小惑星が落ちてきて地球が滅亡する」と
 発表されてから5年が経った仙台のまち。
 北部にある団地ヒルズタウンを中心に、
 3年後にみんな死ぬかもしれない、という状況で
 さまざまな生き方をする人々を
 8篇の短編形式で組み合わせて描いていく。
 この状況自体は新井素子さんの
 「ひとめあなたに…」で使われていましたし
 設定としてはわりにある気がします。

 ★よく考えられた構成
 ただ、細かい点の工夫がけっこう充実しています。
 短編の登場人物がほかの短編でチョコチョコでてきたりするほか、
 家族をバカ呼ばわりしていた父親が主人公の表題作「終末のフール」
 をはじめ、それぞれの章が「××の×ール」とそろえています。
 例えば「天体のヨール」「鋼鉄のウール」など。
 あと3年で滅亡する状況で、初めて子供に恵まれた夫婦「太陽のシール」や
 事件に巻き込まれた妹の自殺を報道したテレビキャスターに
 復讐を図る兄弟「籠城のビール」
 でも、砦をつくって最後まで生きつづけようとする人深海のポール」
 もいたり、とさまざま。
 でも、最後は希望を感じさせる終わり方がいい感じです。
 個人的には「太陽のシール」が一番おすすめです。
 もっとミステリーっぽい人のイメージでしたが、
 いろいろ読んでみたいと思いました。

 追記(2006/7/7)
 伊坂幸太郎さんがまた、直木賞候補になりましたね。
 (番外・直木賞で紹介しています。)
 対象作は「砂漠」なんですが、
 この「週末のフール」もなかなかいいと思うんですけど。

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